その1の出張は日曜を挟みました。
その日曜の昼にランチを食べるため、その街の最高級ホテルのレストランに行きました。
その街は経済特区に指定された、当時人口140万人という福岡市並みの都市でした。
そのホテルにはニクソン元米大統領も泊まったという話も聞きました。
コース料理を頼みました。日本の10分の1位の料金でした。それでも地場賃金の月収に近い金額です。
アサリの酒蒸しを口に入れると、嫌な味がしました。すぐにウエイトレスを呼び、クレームしました。背が高く美しいモデルのようなウエイトレスが何か言いましたが、通訳がなかなか訳してくれません。「何て言ってる?」
当時経済特区の最高級レストランでウエイトレスになれるのは、その街で最も才色兼備な女性です。
彼女は上から目線で私にこう言いました。
「これだけの数のアサリがあれば、その中に一つや二つは臭うものもあるかも知れません。少なくともあなたはそれを選別する能力があるのですから、何の問題もありません。」