博多メイはりきゅう院
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  • 中国 その8

    50年程前に製作されたアメリカ映画「北京の55日」を私がワクワクしながら観たのは小学生高学年か中学生の頃でした。今になって考えれば、史実を基にしたと言っても、アメリカ映画としてのバイアスは当然掛かっていて、御馴染みの西部劇の、勇敢な西部開拓者(白人)対 野蛮なインディアン(ネイティヴアメリカン)のような、娯楽映画ながらアメリカの国家戦略が行間に感じられ、ずいぶんアメリカに都合の良いストーリーでした。

    1900年に起きた「義和団の乱」のことですが、「北清事変」「拳匪の乱」とも呼ばれます。中国を侵略し、北京の紫禁城に籠城した、欧米列強のイギリス、アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリアそして日本の8か国連合軍約500名と清王朝軍とそれを支えようとした拳士たちの2ヶ月間の戦いが題材です。

    主役はチャールトン・ヘストン演じるアメリカ軍のルイス少佐です。
    余談ですが、チャールトン・ヘストンは「十戒」「ベン・ハー」等の主役として、当時ハリウッド映画全盛期の正統派スターでした。
    若い頃は公民権運動に参加する等リベラルでインテリな俳優でしたが、その後は全米ライフル協会会長として銃規制政策に反対し、晩年の評価は分かれています。

    実際の籠城の指揮官は日本陸軍の柴五郎中佐であり、それは各国の軍隊の中で彼が階級的に最上位だったことと、能力的にも英語、フランス語、中国語に堪能な上、リーダーとしても非常に優秀でした。映画の中では若き日の伊丹十三が空手を使う将校として、柴中佐の役を好演しています。事実この籠城戦に一番貢献したのは日本軍でした。

    「義和団の乱」の歴史的解釈は複雑で色々あると思いますが、要は日清戦争後に疲弊し腐敗した清王朝とそこにつけ込んで来る日本を含めた欧米列強との闘いでした。

    全く頼りにならない清王朝でしたが、欧米列強に食い荒らされることに怒った民衆が、「扶清滅洋」(清を助け西洋を滅ぼすべし)をスローガンに立ち上がりました。

    「清王朝」は弁髪(剃髪でありながら頭頂部から一本だけポニーテール)の女真族(満州族)であり、中国人の大多数である漢族ではありません。中国の歴代王朝で漢族でないのは、あと「元王朝」の蒙古族だけです。日本は奇遇ながら、この二つの王朝に、元寇と日清戦争で勝利しています。

    この清王朝を支えようとした民衆の中心を成したのは、白蓮教徒等の何と敵対していた主に漢族の武術集団でした。重武装の8カ国連合軍の兵士たちは、刀槍のみで突進して来る拳士たちに、恐怖感と共に敵ながらある種の感動を覚えたとのことです。

    その後戦いに敗れた拳士たちは清王朝や欧米列強の弾圧で四散しました。

    日本などとは全く異なり「おかみ」あるいは「国家」という「縦糸」が数千年間もアテにならなかった中国では、民衆の中に自己防衛のために、このような宗教的秘密結社や、政治的秘密結社、地域的秘密結社の強い「横糸」が形成されて来ました。この結びつきは日本人の想像を超え、時の権力やイデオロギー、職業、貴賎、国内外も関係なく、世界中にそのネットワークを拡げています。
    最近の例としては、1989年の天安門事件のリーダーが簡単にアメリカに逃れたケースがありました。

    時代は進みその約30年後、日本陸軍の特務機関員(いわゆるスパイ)として、中国に深く潜行していた、少林寺拳法の開祖 宗道臣(以下開祖)は任務の合間に、その義和団の乱の生き残りの崇山少林寺の老師たちに拳技を教わりました。国際社会の非情さや自信を喪失した日本人に対して使命感を持たれた開祖は、戦後帰国し日本で少林寺拳法を創始することになります。中国人の厚い情に接し、ある時は命を救われたりした開祖が終生中国に好意的だったことは良く理解できます。

    話は変わりますが、
    中国に好意的な文科大臣は、大臣の裁量権を乱用し問題になっています。20年程前は将来日本初の女性総理大臣にもなるかと期待されましたが、時が経つとその能力の程度が国民に知れ渡り、部下のキャリア官僚にも相手にされていません。父親譲りのダミ声と下品な冗談で「アメとムチ」を使い分ければ回りはひれ伏すと思っていたでしょうが、天才政治家だった父親のようには行きません。レベルが違います。今回のことも、今更権力が欲しい訳ではなく、単に目立ちたがりだし、近付いてきた選挙に取り敢えず勝つためのパフォーマンスと思われます。

    最近は2世3世の政治家が多く親の秘書等をした後に立候補して来ますが、「他人の飯」をきちんと食ったことが無いので、組織の意思決定のプロセスやメカニズムが分からないまま歳だけ取っています。言っていることが正しくても、それは庶民の井戸端会議や赤提灯でのグチレベルに過ぎず、「大きなバスは急に曲がれない」のと同じで、民主主義には醸成に時間と手順がいることを理解していません。優秀なキャリア官僚集団に対し、一人で政治主導だと唱えても面従腹背されるだけです。前の前に総理大臣をした大金持ちで親も祖父も大政治家だったボンボンも組織にいたことはなく、せいぜい大学の研究室にいた人でした。頭は非常に優秀でも実際に経験したことが無いことは肌で理解できません。いずれにしろこの政権は近々終わりますが・・

    又話が変わります。
    今日中国でトップリーダーが交代しました。
    本来はこの会議場にいたはずの、とある市長(といっても人口2900万人)が先日権力闘争に敗れ失脚しました(しかし捲土重来の可能性はあります)。不正蓄財が数千億円だそうです。中国のGDPは日本を超えましたが、1人当たりだとまだ日本の10分の1です。したがって数千億円は日本人にとっては数兆円の金銭感覚です。
    あの剛腕政治家の政治資金不正使用疑惑でさえ4億円です。

    それにしてもなぜそんなにお金が集まるのでしょうか?
    一党独裁あるいは絶対君主王朝にヒントがあります。先進的な民主主義国家では権力には義務と責任が付いてまわりますが、そうでない国では権力には利権が付いて来ます。
    法律はきちんとあります。しかし日本や欧米諸国と違い権力者の許認可の裁量権に幅があります。
    仮に先の文科大臣のケースだと、日本だと野党や世間(つまり選挙)が許しませんが、あの国だったら3大学の理事長は裏から贈賄することで解決することになります。つまり許認可権は莫大なお金を呼び寄せます。尤もらしい理由を付け「これは認可できんなあ」とつぶやけば良いのです。

    今世界で先進国と呼ばれる国は、必ず封建時代を経ています。西欧の小さな王国や日本の江戸時代の幕藩体制がそうです。どんぐりの背比べのような小国が、比較的ゆるい主従関係で切磋琢磨しました。これが産業革命へと発展して行きます。

    絶対君主王朝だと厳しい上意下達です。たしかに意思決定は早いです。しかし下の者は権力者を恐れ、面従腹背し、将来に備え私腹を肥やすことに専念します。国を真に発展させようとは思いません。

    しかしウラハラに利点もあります。一人ひとりの権謀術数の能力は鋭く研ぎ澄まされます。4千年間も鍛えられています。無菌室育ちの日本人など太刀打ちできません。

    先日はアメリカでもオバマ大統領の連投が決まりました。
    我が国も「近いうちに」選挙になるはずです。
    混迷する世界が少しでも良い方向へ進むことを祈ります。

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